都市に関する多種多様なセンサデータから、直接知ることのできない被害を把握・予測するための解析技術の研究開発です。
①詳細な時間・空間分解能における水害リスクの定量化
水害の際のリスクを時間方向に拡張できないか、つまり降雨の状況に合わせて刻一刻と変化する危険を数メートル単位で推定・予測したいという目的で行ったのがこの研究です。降水データ、河川水位データ、DEMなど、様々な時間分解能、空間分解能を持つデータを統合的に解析し、5-10m単位での詳細なグリッドの状況を5分おきに推定する手法としてインディケータモデルを開発しました。
数値解析による評価はもちろん、リアルタイムなデータを利用したモデルの性能を調べるため、ジオラマによるデモ機を開発し、水位などのセンサデータを取り入れつつ、各グリットの危険を把握する実験も行っています。
②異常検知など人流データの解析手法の研究開発
水害の際に収集することのできるデータはごくわずかで私たちは少ないデータから被害の程度を把握しなければなりません。そこで、これまでに雨や川のデータ以外のデータを利用して、市街地がどのような状況にあるか、解析する手法開発を行っています。これは、水害の発生が懸念される地域のGPSデータを利用して、普段と顕著に異なる動きを検出する解析です。この普段と異なる動きを異常とみなし、人口の少ない地域、つまりデータ数の少ない地域でも検出可能であることがこの手法の特徴になります。
そのほか、人の移動データからその人がどのような目的をもち移動しているのかを推定し、その目的に合わせた情報提供を行うための解析とシステム開発を行っています。これは展示会などの会場に設置したBLEのデータをもとに推定した人の移動経路から回遊性など行動の特徴を見出し、急いでいる人には簡潔な情報を、多くの場所に興味を持っている人には様々な情報提供を行うしくみです。実際の展示会場でのデータを利用した解析のほか、シミュレーションによる評価などを行っています。
③交通データからの異常検知手法の開発
雨や川のデータ以外のデータを利用して、市街地がどのような状況にあるか、解析するもうひとつの手法として交通データを利用した解析を行っています。雪が降った際、私たちの社会はどのような影響を受けるのかについての解析がこの研究になります。豪雨や降雪によって、道路渋滞が発生しやすい道、事故が起きやすい道など、「道」には詳細な単位ごとにそれぞれ特定のリスクを持っていると考えています。降雪の時に遅延が起きやすい道をカルマンフィルタや状態空間モデルなどを使って推定し、実際のバスの運行データやxbandMPレーダや降雪量のデータを使用して、その評価を行っています。