研究テーマ1:都市に関するデータの収集と活用

都市に関する多種多様な資源(環境、人流等)からセンサデータを大規模かつ高精度に収集・流通するためのセンシング技術の研究開発です。

①インテリジェントな水位監視システムの開発

大都市で発生する浸水被害はそのほとんどが中小河川、水路で発生する内水氾濫です。現在、主流の河川モニタリングシステムは1級河川などの大きな川や危険箇所を対象とした監視が中心です。

そこで、設置運用コストや設置場所の確保が難しい中小河川、水路でも観測を行えるよう、従来数十万~数百万円かかっていた導入コストを10万円以下に抑える浸水観測機器と、データを自動的にクラウド上に集約するシステムを開発しました。このシステムの優位な特長は、小型で小さなスペースにも設置できる点、最も安価にシステムを構築できる点、複雑な設定を一切せず、設置するだけでシステムが溢水までの余裕高を自動検出し、観測を開始できる点となります。

 

このほか、電源の取りにくい箇所でも簡易に設置できるよう、太陽光で動作する監視システムの開発と動作検証も行っています。


②水害発生時の浸水位の時間空間分布を推定・予測する
データ同化手法の研究開発

モニタリングシステムの設置がない場所では、水害の際に周囲の状況を知る手段はほとんどありません。しかし、私たちにとって、川は溢れているのか、道路は歩ける状態なのか、車での通行は可能か、そしてこの先、街はどのようになってしまうのかを知ることは非常に重要です。

このデータ同化手法では、モニタリングシステムの設置がない場所であっても、事前の氾濫解析シミュレーションと周囲のモニタリングデータを利用して、道路の様子を探るための研究です。状態空間モデルを空間方向に拡張した新しいモデルを開発し、モニタリングデータをもとに行った水位予測のデータと合わせることで、10分から30分先までの街の冠水状況を5-10mメッシュで予測します。このモデルは、まだ少ないデータでの実験と評価までしか行っていませんが、今までのモニタリングデータ知ることのできなかった水害時の市街地の全体像をリアルタイムで把握できる可能性があります。